【インタビュー】「教えない英語」って何ですか?一般社団法人ペアリド 代表理事のあべゆかこ先生

今回のインタビューは、生徒さんから「ゆっか先生」と呼ばれ親しまれている「教えない英語」一般社団法人ペアリド 代表理事のあべゆかこ先生。

英語教室なのに「教えない英語」!ってどういうことでしょう?

10月8日(木)に予定されているオンラインミニ講座でご登壇されますが、一足先にその秘密に迫ってみました。

Q:
英検1級やTOEIC980点など素晴らしい資格を持ち通訳をこなしていたと言うゆっか先生が、高校生の時はなんと落ちこぼれだったと言う体験からお聞きしました。

A:
そうですね、NYへ家族と移り住んだ時は本当に落ちこぼれだったのです。

特に英語が得意でもなかったので、現地の高校に入った途端、本当にものすごく落ちこぼれになりました。

「ちょっと頑張ればできるかな」というレベルだと人間って頑張れるのですが、あまりにも不可能なレベルだったので突然英語で社会や理科など、しかも高校だと結構内容的に難しいのでそれを英語で学ばなければいけない。もう諦めたというか、「もう無理!」ってなっていたんです。

そんな時に英語で詩を書くという授業があって、私には無理だからって、もうシャッターガラガラガラって下ろしていたんですけど、そんな時に先生が甘やかす事もなく、「今まで英語を習ってきたんだから何かは書けるでしょう?何でもいいからとにかく頑張って書いてみなさいよ、辞書使ってでもなんでもいいから」とおっしゃってくださって、そこで仕方なく書いてみたわけです。

そしたらそれをすごく褒めてくださってA+(最高評価)をつけて教室に貼ってくださったのです。ようやく私という人間が存在しているんだということを認めてもらったような気がしたのです。

そんな風に褒めてもらう、認めてもらうことで自己肯定感が上がるのを実際に体験して、承認をもらうということの力の大きさを感じました。

Q:
その後、大学2年生の時に成績優秀者リストに載って海外旅行までされていますよね。数年で大きな飛躍を遂げたわけですが、どのような勉強したのですか?

A:
そうですね、必死だったので思い出せなかったりするのですけど(笑)。

教科書を見ても全然わからず、最初は勉強の仕方もわからなかったのです。

わからない単語を調べようっていうレベルではなく、もう全部がわからない(笑)。

英語で生物とか元々わからないアメリカの歴史などをやったりしますし・・・。

最初は本当に単語一個一個全部調べようと思って全部の単語を書き出したりしたのですが、そうすると全く進まないのです。

かなりのページ数を読まないといけないのですが、全く進まないということになった時に、これまた現地の別の社会の先生がアメリカ人に対しての高校生の生徒に対して「速く読め!」って指示をしていたのです。私向けじゃないなと思ってたのですが、「できないと思ったら速く読め」とそこは聞き取れたので、じゃあやってみようと。そうしたらわからない単語はたくさんあるのにかえってわかるという不思議な現象に巡り会いまして。

そこからですね、そのやり方でとにかくたくさん文章を読んでいきました。

あとは、自分の気持ちの問題もあるかなと思います。「できない、できない」と思ってやるとできないもので、「できるできる」って思ってやると不思議とできることもあると思います。

自転車で行けるぐらいご近所さんだったのにzoomでインタビュー。これもある種のコロナ病ですかね(^_^;)

Q:
そして、日本で就職して、あるIT企業で通訳などをされていたのですよね。その時に「ビジネスに通訳は必要ない」と思ったそうですが、なぜそう思われたのか教えていただけますか?

A:
会議などで私が通訳として存在していると、日本人のエンジニアの方もアメリカ人の方も私の顔を見て話してしまうのです。特に外国の方は目を見て話すみたいなところがあるので、私の顔を見て話されてしまうと私とは仲良くなったりするのですが(笑)、それはビジネス上必要ないことなのです。

私はその話の中身はまったくわかっていない人間なので、やはりご本人同士がきちんと目を見て自分の言葉で話し合ってお互いの腹の探り合いじゃないですけど深いところまでしっかり通じ合うには、やはりご本人同士の言葉で話すことが必要不可欠だなって実感したのです。

そんなに英語がお得意でない方でもコミュニケーション力の高い方っていらっしゃるじゃないですか?

そういう方はどんどん仲良くなられるのですね、海外の方と。

そういうほうがいいなと思ったのです。変に私が中途半場に介在しない方が。

そこで、通訳として道を極めるというよりは、当事者同士がコミュニケーションできるような社会を実現していくということをやりたいと思うようになりました。

Q:
ゆっか先生は実体験から独自の視点で現在のプログラムを考えられているのが素晴らしいですよね。これまでどんなギャップを感じ、どのようにプログラムに反映しているのか他にも教えていただけますか?

A:
実際に私の子供が、もう今は高校生と中学生なのですが、小さかった頃に英語習わせようと思った時があったんですね。その時にめぼしい英語教室を覗いたりもしたのですが、もう15年くらい前なので今は違うのかもしれませんが、歌ったり踊ったりみたいな教室が多かったのです。それはそれで一つのやり方なのでしょうが、英語を使って大学で勉強したいとか仕事をしたいという時にそこまでの英語力が身につくのかイメージが湧かなかったんですね。

それで自分でやろうと思ったというところもあります。

英語力云々というよりは体験や知識という部分がすごく大事だと私は思っているので、自分の意見を言うという一見簡単なプロセスなのですがとても重要で、英語力というのは、単語をたくさん知っているとか文法ができるって言うことではない部分がすごく大きいと思います。 

ゆっか先生のウェブにはいつも楽しい企画がいっぱい。パワフルでアクティブな先生です。

Q:
「英語はあくまでもツールだ」ともおっしゃっていたと思いますが、日本の子供たちが今強化すべきスキルや姿勢があるとすればどんなことだと思われますか?

A:
やはり自分の意見をどんどん発言するというその姿勢に限ると思っています。

もちろん人によるのですが、私自身が正に自分の意見を言えないタイプだったのです。

授業中もわざわざ発言しなくてもいいかな、めんどうだなと思ってるところあったのですが、向こうに行くとちょっと変なことだったりずれてるんじゃないかっていうことだったりしてもも、どんどん質問したり意見したりするのが当たり前なんですね。

そこで言った方がどんなことでも言わないより100倍いいっていう雰囲気があって。

日本人の場合は簡単なことなら黙っていたほうがいいとか、確信を持ってから発言することが多いのですが、いわゆる標準的な日本人がそういった習慣の海外の人たちとの中で生きていくって難しいのかなと思います。

ただ、日本人としての良いところでもあるとは思うので、どちらかというと「切り替えができる」と言うかそういった社会に入ったら、ボタン一つでちょっと違う自分になって表現できる、というようなスイッチを一つ持っておくのがいいと思います。

Q:
『「教えない英語」コミオ英語教育ラボ』と教室名にも含めていますが、「教えない英語」とはどのような意味なのでしょうか?

A:
先ほどお話しした実体験から、英語って人に教えてもらってやることではなくて、自分の自己肯定感を高めて自立してみずから勉強していくものだというのをすごく実感したのです。

私自身もアメリカに行ってすぐ英語の家庭教師の方にいらしていただいて勉強していたのですが、いくら教えてもらってもそんなに伸びず、やっぱりできるようになったタイミングは自己肯定感が上げてもらってからなんです。

どんな教科もそうでしょうが、「教えてもらう」という受け身の姿勢ではなくて、こちらは教えないから自分でやっていこうね、そういう自立したマインドを見つけていただければなと思っています。

だからモチベーションを持ってもらうことを大切にしています。

そこがすべてだと思います。

最後にオンラインミニ講座でお伝えしたいことや参加者へのメッセージをお願いします

いつもPTA などでさせていただく講演会では、これからの英語教育がどうなっていくのかと言うことと、それに伴ってご家庭でできる三つのことを話しさせて頂いております。

今回は15分という短い時間ですのでその内の一つだけお伝えいたします。

今はコロナのこともあって、現場は新しい改革どころではなく、従来の単元を終わらせるだけでも大変なご苦労をされていると聞いています。

そんな大変な中ですけれども、英語教育に関してこれからどうなっていくのかというところを少しでも情報を入手して、ご家庭でどういう方向で行きたいのか考えていくきっかけにしていただければ嬉しいと思っております。


インタビューを終えて

今年から新学習指導要領が開始されているにもかかわらず、コロナ騒動のせいか、私たち保護者がその内容を知る機会が少ないように私も感じています。

10/8のオンラインミニ講座が楽しみです!
講座の詳細、申し込みはこちらをご覧ください。

ゆっか先生、お忙しい中貴重なお話をしていただきありがとうございました。


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オンラインミニ講座の動画はこちら

インタビュアー 星谷みよ子